君たちはどう投資するか? 改良!▲(マイナス)5%ルール編 ~マイナス5%戦士の黎明の旅立ち~

本記事では、マイナス5%投資法の弱点である「高値つかみ」を回避するために、筆者(midori)がマイナス5%ルールに追加したヒューリスティクスとシミュレーション実験の結果について述べます。

前回の日経225データを用いたシミュレーションで「マイナス5%ルールでは株価が乱高下するような投資環境だと高値づかみを連発してしまい利益がマイナスになる」という弱点が露呈しました。今回はその弱点を解消するための▲(マイナス)5%ルールの改良について述べます。

免責事項:本記事の考察、データは筆者(midori)が行ったシミュレーション結果に基づきます。シミュレーションは筆者作成のpythonプログラムで行っております。プログラムはバグってる可能性もあり、結論も正しいとは言い切れません。それを踏まえた上で本記事をお読みください。

高値つかみを解消するための3つ方策+PERによる積み立てboost

株価が上下している状況で、高値であることを検出する方法には何があるでしょうか? 私は以下の3つの方法を試すことにしました。

マイナス5%下落時と同等の前回のスコア時点から最高値に引いた線の傾きに基づいて投資をskipする(m5pr_slope)

この傾きで「どれだけ急上昇した」「じっくり上昇したのか」を識別できないか、という考えです。じっくり上昇した後の急落は一時的な調整の可能性が高いと考えます。なぜなら、高いスコアが定常的な状態だからです。急上昇後にはさらに下がる可能性が高いと考えます。なぜなら、上昇後が特異点なので、もっと値を下げて元に戻ろうとすると考えることができるのです。このslopeの値が高い場合はマイナス5%ルールをskipします。このskipの判断はヒューリスティクスの一種で理論的な裏付けはありません。

マイナス5%下落時のスコアと同じスコアまで遡った際の期間の長短に基づいて投資をskipする(m5pr_day)

マイナス5%以上下落した株価と同等の過去の時点までの期間が長ければ長いほど、そのマイナス5%の下落は過去にさかのぼれたとことになるので、よい下落なのではないか? という考えに基づくルールです。長い時間をかけてじっくり上昇した後の下落は、下落した後でしっかり値段を戻してくれるというのを期待します。

マイナス5%下落時のPERの値の大小で投資のskipを判断する(m5pr_per)

PERとは「Price Earnings Ratio」の略で、株価が1株あたり純利益(EPS:Earnings Per Share)の何倍まで買われているかを見る投資尺度です。現在の株価が企業の利益水準に対して割高か割安かを判断する目安として利用されます。PERの数値は、低いほうが株価は割安と判断されます。なお、1株あたり純利益は当期の予想数値を用いるのが一般的です。


https://www.smbcnikko.co.jp/terms/eng/p/E0025.html#:~:text=PER%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%8CPrice%20Earnings,%E5%89%B2%E5%AE%89%E3%81%A8%E5%88%A4%E6%96%AD%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

マイナス5%ルール発動時にSP500に対して算出したPERが特定の値以上の場合は「割高」であるとして、ルール発動を無視する、というものです。PERが30以上の場合はマイナス5%ルールでの投資をskipします。30という数字は「えいや」で決めています。

他、PERを利用して積み立て投資額をboostしてみよう(split5per)

マイナス5%ルールとは別に、PERの値が低いとき(とりあえず25に設定)は積立額を2倍にしてみようという手法を試してみることにします。SP500が割安ならたくさん買おうというヒューリスティクスです。

マイナス5%ルール改良の結果

まず、日経255でのマイナス5%ルールの改善の効果を確認してみます(PERのスコアは日経225では取得難易度が高いので今回は評価していません)。slope=20、day=300のパラメータをえいやで設定しています。

記号最大利益最小利益平均利益勝率
m5pr524,062,789円-6,368,918円998,004円0.3830
m5pr5_slope12,382,280円-4,335,796円2,176,558円0.5917
m5pr_day6,185,956円-5,082,038円558,039円0.4801

勝率、最小利益において、slopeもdayも改善効果ありですね。特にslopeは勝率をグッと押し上げて、元本割れの赤いライン下から浮き上がった期間が長くなっています。最大利益はオリジナルのマイナス5%ルールよりも落ちますが、m5pr_slopeもm5pr_dayも投資をskipするヒューリスティクスなのですから、これは想定内です。

次に、SP500でのマイナス5%ルールの改良の効果をみていきます。slope=10、day=300とパラメータをえいやで決めています。

記号最高利益最小利益平均利益勝率
m5pr538,076,642円-2,309,461円15,387,649円0.9220
m5pr_slope39,174,464円-2,045,532円13,705,393円0.9320
m5pr5_day21,321,677円-1,090,626円6,064,540円0.9244
m5pr_per30,456,515円-1,941,182円11,877,758円0.9220

(SP500ではマイナス5%ルールの高値つかみの弱点があまり露呈しないので改良効果も)あまり変わりばえしませんが、m5pr_slopeが通常のマイナス5%ルール(m5pr5)より勝率がちょいよいですね。SP500では最高の勝率です。マイナス5%ルールの改良法としてはslopeが有望そうです。

最後に、SP500への投資において、上記のルールを積み立てと合わせて使った場合、および積み立てのPERでのboostのシミュレーション結果をみてみます。

記号最高利益最小利益平均利益勝率
split530,553,372円-2,457,497円11,562,856円0.9135
split1051,521,517円-2,987,540円18,200,677円0.9100
split5per49,656,937円-3,241,316円17,154,722円0.9115
split5per+m5pr_slope60,992,622円-2,951,840円20,974,859円0.9115
split5+m5pr_slope53,230,943円-3,138,869円20,338,373円0.9091
yearfirst75,909,685円-3,061,162円21,219,140円0.8971
alump86,274,788円-2,294,954円15,606,344円0.8669

マイナス5%ルールのslopeによるskip、PERによる分割投資倍プッシュ、それぞれ効果がありそうです。月々5万円の積み立て投資法を勝率をほぼほぼ維持したまま、一括投資の方向にブーストできています。マイナス5%ルールのslopeによる改良、PERによる分割投資方の改良、過去データに対してですが、効果ありでした!

結論:「最強の投資法」などない

シミュレーション結果を踏まえて、最強のインデックス投資法とは何か?についての結論を書いてみます。勝率なら分割ですが、最高益なら一括で、一長一短あり、最強なんてわかりませんでした(伏線回収)。

・最大利益を目指すなら(年初含む)一括投資
・勝率を目指すなら分割投資がよさそう(でも最大マイナスは分割のほうが大きい)
・その中間を目指すなら、分割投資+マイナス5%ルールは選択肢になりうる
・(ただし、高値つかみには注意が必要)
・(高値掴みの回避は騰落のグラフでの「傾き」の計算や、PERなどで(ある程度)回避できる可能性があるかも)

あるいは別の見方をすると、SP500でインデックス投資すると、どの投資法でも勝率は90%近くになるわけでして、結論としては、SP500に投資してるみんなが勝利者なんだ!(特に2000年代以降は)というのはあると思います(ただし、今後もそうとは限りませんが)。

投資シミュレーションのグラフながめてきた思ったのですが、どの投資手法でも負ける時は負けています。負ける時はどんな手法でも負けるし、勝つ時はどんな手法でも勝てます。投資する時期によって15年後の利益にも大きく差がでるので、SP500に投資する以上は投資結果はその市場環境によるところが大きいように感じました。

さらなる考察:マイナス5%戦士の明日はどっちだ? 鵺か?(ぽえむ)

さて、私も今回のシミュレーションの結果を用いて、自分の投資戦術をの見直しを行おう!と、思っていたんですが、すかっとした結論はでませんでした。

わからん… ますますもってわからなくなってしまったぞアルベルト
混世魔王・樊瑞 のセリフ 「ジャイアントロボ(OVA)」、より)

投資戦略には「早めに投資してお金を投資の世界にさらしておく」というの鉄則があります。特にSP500は基本右肩あがりなのですから、早ければ早いほど利益が出る可能性が高まるというわけです。

ですが、今回のシミュレーションをしてみて感じたのですが、SP500は為替レート(買う時と売る時)も関わってきますので、そんな鉄則通りには一筋縄ではいかない印象です。最初に一括投資した場合はその時々の為替の影響をもろかぶりします。2023年からは1ドル150円となかなかドルが高いわけですから、ガツンと一括というのは、私は躊躇してしまいます(小心者)。為替レートがどのように反映されるのか、それは今後調べてみたいですが。

そして、今(20250528時点)、SP500は史上最高値付近(5921)にいるわけです(トランプショックで下がったのが再び戻ってきた)。年初のSP500は最高値付近(5800~6000)にいたわけでございます。ここからさらにSP500が7000とか8000とかに伸びていくのか、それとも長く停滞するのか、下落していくのか、私にはわかりません。でも、伸びていくとすると、今投資しておかないと、その伸びによる旨味はえられない…。

なので、積み立て投資をメインとしつつ、改良のマイナス5%ルールでお金つっこんだり+お値段や為替を見ながらで年初一括したり(or 年初にまとまった額の投資)みたいな中途半端な鵺(ぬえ)みたい感じで頑張っていくことになりそうです。

マイナス5%ルール投資法は経済理論的にはおそらくベストな投資方法ではないです。高値つかみの弱点を持っています。機械的に(年初)一括投資 するのがおそらくは「最強に最も近いインデックス投資法」でしょう。それでも、心弱い私には、上記のようないろんな雑念が心にわいてきて、その投資強度には耐えられないのです。泣きながら残業して稼いだ虎の子のマネーを、えいやで投入する、そのストレスに耐えられない…。

マイナス5%ルール投資法は気休めの投資法かもしれませんが、でも、今の私にとって最も大事なポイントは、投資する決断ができるか、だと思います。マイナス5%ルール投資法は気休めでも投資にお金を投入する機会を作ることができます(それでも心臓に悪そうですが)。分割投資をしながら、気休めで心をごまかしながら、マイナス5%ルールを観測しながら、どうにか人生のゴールまでたどりつこう、という心持ちであります。長い記事になりましたが、今の心境をこのように記して、「君たちはどう投資するか?」の連作記事は一旦この辺で筆をおくことにします。(おわり)


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